漫画の話をしましょうか

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東城麻美「ラブプリズム」-人様の構築したフォーマットを模すことで成立する表現-

2007年頃からBL読んできました。
大事に家に置いて何度も読み返してる本もあれば、買ってすぐに売り飛ばした本もある。
その数、すでに数百冊。下手すると千冊行ったかもしれない。
その中で超個人的「キング・オブ・ハズレ」「キング・オブ・カス」は東城麻美の「XY」でした(個人の見解です)。

「XY」はいろんな意味ですげー本だった。
BL読み始めたばっかでさ、何から読んでいいのかよくわかんなかったからさ。とりあえず売れ筋読もうと思って東城麻美に手を出したんだけどさ。
東城麻美作品も何から読んでいいのかよくわかんなかったから、ますは初期作品からと思って「XY」買ったんだよ。
………いやあ、もう。買った事をここまで後悔した本ははじめて。
絵柄がまんま上條淳士
上條淳士劣化コピー
で、内容はレディコミ。
レディコミもレディコミ、淑女の皆様方が連想されるようなメジャーなレディコミではございませんことよ。名も知らんような出版社から出されてるコンビニで読み捨てられる読者体験手記ばっか扱ったような。レディコミ界のカーストの下位に属するやつ。それの「禁断の愛」特集号、って感じ。
エロ描写がまたコマ割からセリフから効果音まで、すべてレディコミの手法。
ストーリーはトンデモ。
そんなことされたら受け、死ぬし。って内容。
いや、漫画だから死なないんだけどね。フツー死ぬわな。あんな超特大ディルドを何の準備もなく突っ込まれたら。
レディコミ臭いBLがここまで気持ち悪いもんだとは思わなかったよ。

というわけで、一読後躊躇なくゴミ箱に直行。
買った本をゴミ箱に捨てたの、わたし、後にも先にもこの「XY」だけですよ。
で、すっかり「東城麻美さんはもういいです」って気分になり、それ以降一度も読んだことありませんでした。

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表紙は好きでした




ところが、うっかり、ブックオフで手に取っちゃったんだな。「電光石火BOYS」を。
!!!!!
読めるじゃん!面白いじゃん!
王道BLつか、BLのスタンダード。
レディコミ臭は皆無。
上條臭はまだ絵柄に残ってるが、画力が著しく向上しててとてもキレイ。
ていうか、これ、BLのスタンダードっていうより、少女漫画のスタンダードだったのよ!
ビン底メガネの冴えない高校生男子がメガネとったら美少年で。ひょんなことからモデル事務所に登録することになり。学園の中心的存在の男子たちと親しくなっていく。でも本人の性格はオクテで天然ボケ。登場人物がすべて美形男子ばかり。主人公の天然ボケ以外はみんな家庭環境に問題を抱えていて。華やかでにぎやかで多少汚いこともある、いかにも「少女漫画に出てくる芸能界」の描写がとても「乙女の憧れ」って感じで。なんかもう、「乙女の憧れ」を全て詰め込んだみたいなキャラクターとストーリー展開にヤられましたよ!
なんつーか、BLの萌えっていうより、わたしの少女漫画心をくすぐってくれるのよ。
主人公が女設定だったらまんま、30年前の少女漫画だもん。もう少女漫画のお手本みたいな連載第1回でしたよ。
導入部からしっかりキャラと世界観が説明されてて、きっちり起承転結つけてて「引き」が魅力的で。

東城麻美って、てっきりレディコミのひとだと思ってたんだけどなあ。
少女漫画めっちゃ描けるじゃない!
BLだけど。
調べたらレディコミでデビューしてBL行って、そのあと少女漫画にも行って、またBLに、って経緯のひとなのねー。
へー。

 

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で、東城さんもっと読みたい!という心境になり、ついに単行本コンプリ。
もうお亡くなりになってる漫画家さんなので最新作が読めないのと、コンプリによってゴールに辿り着いてしまったのが辛い。


「ラブプリズム」は遺作で、ものすごい問題作だと噂はきいていたが、なんせ作者が東城さんなので手を出す気になれなかった。でも今はもう東城さんは何でも読みたいという心境なのでついに手を出してしまったのだな。
が、これは普通レベルのBLではなかった。いわゆるハードコアポルノ。
放尿・SM・近親相姦の3連コンボ。
変態ポーカーのスリーカード。
未完のまま終わってるのでアレだけど、このまま続いてれば当て馬巻き込んで変態ポーカーのロイヤルストレートフラッシュまで行きそうな勢い。
医者で鬼畜の兄が、高校生の実弟と近親相姦をしてて、医療器具などの道具攻めで弟を徹底的にいたぶる話です。
もう。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。痛い。
物理的に痛い。
痛い描写が多すぎて死ぬわ。
わたしホンットにSM方面の回路無いんだよなあ。
こんな描写で萌えるなんて絶対無理。
セクシャルマジョリティですんません。
ひたすら痛くて読んでて辛かったのですが、変態ポーカーも行くトコまで行くと諦観からか麻痺からか、笑えるようになってくる不思議。
ペニスにピアスだのED用医療器具だの付けられた弟が電車に乗ってると、いつのまにかそっと後ろから寄り添い、弟に痴漢を働く兄。オマエどっから沸いて出たんだよ。医者ってそこまでヒマなんですか。ツボってめちゃくちゃ笑えたんですけど。いや、シリアスで悲惨で救いの無い話なんですが。

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興味深かったのは、東城麻美というひとはエロ描写が激しくなればなるほどレディコミ臭がきつくなること。やっぱしね、エロ描写がレディコミなんですよ、このひと。構図・セリフ・効果音・体位・スクリーントーンの貼り方、全てがレディコミの様式。
BLのエロってものすごく乱暴に大別すると少女漫画っぽいキレイ系、ゲイビ系(リアゲイ系)、男性向け成人漫画のBLバージョン系の3種にわかれるような気がするんですけど、東城さんみたいなレディコミ系っていうのはわりと珍しいように思う(皆無ではないです。いることはいます。少ないだけで)。
わたしは東城さんは非エロが好きです。このひと、非エロであればあるほど少女漫画になるから。

びっくりしたのはこの1冊だけでおそろしく絵柄が変貌していること。
上條淳士っぽいタッチだったのに、たった1年かそこらで「やまねあやの」っぽいタッチに。
どうもね、「自分の絵」っていうのが無かったひとらしくて、簡単に他の作家の影響受けては、絵柄もストーリーも作風もコロコロ変えていくタイプの漫画家らしくて。

プロ漫画家でも他の漫画家の絵柄に影響受けて絵を変えていくというのはよくあることで別に珍しくない。
漫画の描写技法はオープンソースに近く、誰かが新しい手法を開発すると瞬く間に色々な漫画家が模倣する。
これは漫画だけの現象ではなく浮世絵や西洋画でも同じで、こういうのはパクリとは言わない。
ただね、東城さんはそれが極端。
本当に○○のコピーと見まごうほどに絵柄を変えてしまう。
器用だとか、振り幅が広いとか、そういうことじゃないんだよね。東城さんって。人様の構築したフォーマットを模すことでしか自分の表現ができない。
そのフォーマットもコロコロと宿主を変える。ヤドカリのように。だから作品に統一性がない。
このひとの作品のどこにもこのひとはいない。
その腰の据わらなさ加減が、このひとの「表現」だということ。

 

実に興味深いです。
もう亡くなってしまったひとの迷走と思考を辿る旅は、あまり感心できる趣味とはいえないですね。
でも、不謹慎を承知で言いますが、実に興味深いです。